造船業に関する個人的なまとめ
造船に関わっている知人が数人いるのでメモがてら。
船舶に関しての知識はそんなに持ち合わせてなくて、精々『コンテナ物語』で読んだ程度。この本は巨大利権との戦い方、業界基準フォーマットをめぐる戦いが描かれていて読み物としてとても面白かった。
- 作者: マルク・レビンソン,村井章子
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2007/01/18
- メディア: 単行本
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コンテナ物語で書かれていた内容を自分なりに咀嚼すると、船舶輸送は近代でかなり合理化されていて、運搬ルートや積載量といった工夫の余地はあまり無くなっている。こうなると船舶の絶対量を増やして輸送量の底上げを図るか、維持費を削減するところに着眼点が向かう。
後者に関する取り組みは日本郵船、三菱重工が昔から手掛けてる。
波風の抵抗を減らしつつ、太陽光発電で自活する船。これがあれば海洋生活も夢じゃ無い?
近年の船舶業界
2008年〜2014年くらいの間、船舶製造は中国・韓国が強かったらしい。おそらく船舶製造にかかる人件費が低いことと、中国・韓国が貿易の拠点として存在感を増したという点が大きな要因だったのでは。
記事中に記載があったけど価格競争の結果、船舶製造業は供給過多になっていたらしい。そんな中、コストで勝てない日本企業は業界再編と省エネ化に取り組んでた模様。
船舶のコスト
Twitterのタイムラインから引用。日本の船舶は中長期運用で見た場合コストに優れているらしい。
@HKKsNTTa24 中国製5400トン積みタンカーの年間補機類修理コストが4万ドルくらい。日本の45年もの中古船で4000〜5000ドルだそうです。
中国製海水系バルブは建造1年くらいで動かなくなります。日本船は建造時のバルブがそのまま使えます。
— 裏側 (@Terroristbuster) 2015, 3月 7
ちょっと前、中古物品を海外に輸出する企業がテレビに出ていて同じような話をしてた。
中東や東南アジアの人々がジャノメミシンや日本製エアコンを買い漁る話。 日本製は年代物でも壊れにくく、最新版より若干劣るけど運用コストが低いというメリットがあるとのこと。
ミシンやエアコンの製造業だと壊れなければ買い替えスパンが長くなってデメリットもあるけど、船舶のような耐久財だと定期メンテナンスなんかで利益を上げることができる。 コスト競争の土俵が変わってきたら日本の企業は強いのかもしれない。
短期コストを優位性とするリスク
中韓の製造が結局コスト高になるという問題は、保守費(メンテナンス費など)で稼ぐ道を閉ざしてしまう。粗製乱造が明るみになれば品質に疑問符がつき、結局長い付き合いが出来なくなって単発受注で稼ぐ手段しか残らない。消費財なら問題ないけど耐久財だと辛い。
日本船舶業の未来
雑多な感想を書いてきて思ったのは、日本の管理体系をもたせて海外の人件費で戦うのが最善手な気がする。
かつてHONDAが海外に工場を作ったのは、現地に産業を置くという理由とされている。 当時の経済環境を深堀してないので断定できないけど、HONDAの件も保守費等経済的な理由を鑑みて、最終的な判断を下したのかも。何事も一側面だけで断定できるほど世の中単純ではないですね。